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「名ばかり管理職とは?」  [会員コラム]

弁護士 坂口裕亮(西高43回生)

今回は、ここ何年かの間で社会的関心が高まった「名ばかり管理職」について改めてご紹介させて頂きます。
中間管理職.jpg

「名ばかり管理職」とは、十分な職務権限を持たないにもかかわらず、肩書きだけを与えられて管理職とみなされ、残業代が払われない従業員のことを言います。

そもそも、基本的に法律で定められた労働時8時間、1週40時間という縛りがあります。また、1週間に少なくとも1日の休日を与えることを事業主側に義務づけられています。
その法定労働時間を超えて労働者を労働させるためもしくは法定休日に休日労働をさせるためには、次の3つのことをしなければなりません。
➀就業規則に解すあの命令所定労働時間を超えて労働させることがあるとの記載し、残業がある旨を従業員に周知すること
➁労働基準法36条の手続に従い、時間外労働の上限時間、および休日労働の条件日数を労働者代表と事業主の間で協定を結ぶ(いわゆる36協定です)
③実際に法定労働時間を超過して労働した場合、および法定休日に労働した場合には法定割増賃金を支払う

このように、残業をした場合には、事業主には法定割増賃金を支払う義務があります。
しかし、その例外として、「管理監督者」という立場の労働者がいます。この「管理監督者」には、残業代を支払う必要はありません。

では、「管理監督者」とは、どのような労働者をいうのでしょうか。
ここで、先に結論を述べてしまいますが、必ずしも「世間一般の管理職(係長、課長、店長など)」=「管理監督者」ではありません。この「管理監督者」と事業主が考える「管理職」との概念の差がいわゆる“名ばかり管理職”問題をおこしているといえるわけです。

「管理監督者」に残業代を払わなくてもいい理由は、「管理監督者」とは、「監督もしくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)をいい、「管理監督者」は事業主に代わって労務管理を行う地位にあり、労働者の労働時間を決定し、労働時間に従った労働者の作業を監督するため、自らの労働時間は自らの裁量で決めることができ、かつ管理監督者の地位に応じた高い待遇を受けているため、労働時間に関する規定を適用するのが不適当だからです。
したがって、「課長」「店長」という肩書にとらわれず、労働実態に即して判断することになります。
疲れた.jpg

そこで、どのような労働実態であれば、「管理監督者」と判断されるのでしょうか。

それは、概ね、以下の要素から判断されます。
➀事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
➁自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
③一般の従業員に比べてその地位と権限にふさわしい賃金上の待遇を受けていること

「管理監督者」に該当するかが問題となった有名な裁判例としては、日本マクドナルド事件というものがあります。
この事件では、店長はアルバイトの採用、時給額、シフトを管理する権限はありましたが、営業時間、商品の種類や価格、仕入先などは本社に従わなければならず、企業全体の経営方針にも関与していないとして、「管理監督者」に当たらないと判断されました。

このように見てみると、「管理監督者」にあたる労働者は案外少ないのではないでしょうか。

ただ、ここで疑問にでてくるのは、上記の要素がないとしても、役職手当を払っている場合には残業代は払わなくていいのではないかという点だと思います。

労使間で役職手当の代わりに残業代を払わないとの合意があっても直ちに「管理監督者」になるわけではありません。労働基準法の労働時間や時間外手当に関する規定は、その合意に優先しますので、この場合でも、先ほどの3つの要素から、「管理監督者」にあたるかを総合的に判断することになります。

そうは言っても、いわゆる平社員とは違って役職手当を払っているのだから、役職手当を残業代とみることができないのでしょうか。
残業.jpg

残業代を固定額で支払うこと自体は違法ではありません。しかし、その場合には、残業代であることを明確にしなければなりません。明確に区別をしておかないと、役職手当はあくまでその職責に対する対価であって、残業に対する対価を支払っているわけではないとして、別途残業代を払わなくてはいけなくなる場合もあります。この点、は事業主の方は注意が必要です。

最後に、今まで述べてきたことをまとめますと、
➀「世間一般の管理職」=残業代がでない「管理監督者」というわけではない
➁「管理監督者」にあたるかは労働実態に即して判断する
③役職手当と残業代は別物
ということになります。
以上

■ 坂口裕亮 経歴 ■
平成20年に西高を卒業(43回生)。九州大学法学部、名古屋大学法科大学院を経て、平成27年12月に弁護士登録。平成28年1月に弁護士法人奔流に入所し、現在に至る。
弁護士法人奔流 http://www.bengoshi-honryu.com/

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