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佐中入学の頃 [佐高生(1~16回生)寄稿集]

佐高  3回卒  園田 勲
 
 私は昭和20年佐賀中学に入学した。1学年200人余りだった。戦争中で朝家を出る時は足にゲ-トルを巻き、帽子も服も軍人の姿、途中上級生に会うと立ち止まって、挙手の禮。
 佐中の校章は日本一大きい「中」で、朝礼の時校長先生は「敵機が来たらこの「中」の字を反射させて、敵兵の目を眩やませよ。」と言われた。
 
県立佐賀中学校 制帽.jpg

 上級生は2年生だけで、陸軍士官学校か海軍兵学校に進学予定の3・4年生以外は動員に行っていて学校には来ていなかった。昼休みになると、2年生達が我々の教室にやって来て、机に座らせ「頭下げよ!」と我々1年生をしごいた。
 運動場では元下士官による木銃を持っての厳しい教練。又学校に残って軍人の学校に入る為に勉強している3・4年生による軍人教育。「整列!!、1年1組の指揮は3年〇組の◎◎がとーる!。」こちらは優秀な教練。佐賀中学は軍人学校で優秀な生徒は高校でなく、陸士か海兵に入学した。戦争中であったが、敵国の言葉である英語は良く勉強させられた。空襲警報のサイレンが鳴ると森へ逃げて英語の単語を勉強した。
 
 佐賀は戦争の影響は比較的に少なく、夜は花火のような焼夷弾、昼は操縦士が見える高さで機銃掃射をした。敵機が去ると日本の偵察機が被害状況を調べる為低く飛んでやって来た。遠くで高射砲の音がしても、とても敵機には当たらない。
 「早く降参しなさい」と云う趣旨の長い綺麗な日本語のビラもいっぱい撒かれた。6月19日の福岡大空襲の時は、夜友達の家で勉強していたが、B29の編隊が長い間上空をキーンキーン唸りながら北へ行き、数十分後福岡の空が真っ赤になった。
 
 夏休みになって、我々1組だけ北山に芋作りに動員された。
 北山へ行くときは、川上の官人橋(当時は木造で大雨が降るとよく流された)に8時集合。私の実家は東与賀中割ですが、西川副広江の友人が2時に家に来て2人で官人橋まで行ったが、夜空の星特に流れ星が綺麗だった。何時間も夜歩いたのはこの時だけ。佐賀は平和だった。官人橋から道路は砂利道で疲れはしないが、運動靴の為足の裏がとても痛かった。途中南山で弁当を食べ、午後3 時頃北山小学校に着いた。北山は静かだった。
 8月15日昼重大放送があると云うので、北山小学校へ帰り、運動場でラジオを聞いたが、雑音で何を云っているか分からなかった。午後又芋作りに行き、帰りに神社の境内に集められて、佐賀から上がって来た例の元下士官から「君達は昼のラジオ放送は何であったか分かったか。戦争に負けたぞ。君達はもう親兄弟とも会えない。米兵は肉食動物だから鶏も片つ端から食べるぞ」。その夜は寝泊まりしている体育館で泣いている友もいた。
  10年位前この神社と北山小学校と当時北山にあった旅館を尋ねたが、当時の女将さんから「先生はここに泊まられた」と初めて聞いた。我々は体育館の板の間で雑魚寝だった。夜が明けると、荷物をいっぱい積んだトラックが佐賀からどんどん上かって来た。「何だ、まだ物資は沢山あったんだ。」とつくずく思った。
 終戦後、山を降りた時の記憶はない。
 数日後佐賀の家に帰ったら、何のことは無い以前と変わらず、母が「南の空に大きい音がしてキノコ雲が上がった」と言つたのが心に残っている。
  
 終戦後教育は180度変わったが、佐中のレベルは高かった。新生高校になって学生数も増えた事もあろうが、中学3年3学期で習った事を高校1年でやっていた。現在は、昔の佐中かそれ以上のレベルになっているだろう。
 私は家の事情で佐高3回生だが、佐中1年の時北山で1ヵ月寝食を共にし終戦を迎えた2回生特に1組の友達が懐かしい。

 *東与賀中割は、現在「東与賀街大字下古賀」になります。「中割公民館」から北山小学校迄を当時の徒歩ルートを推測して検索しますと、37kmの距離となります。直行で8時間強かかります。旧制中学校の1年生は、12歳か13歳です。
 *集合場所の「官人橋」は、今の「赤い鉄橋の官人橋」の先代の頃ですので、200m手前にある「ユースピア入口」バス停辺りに架橋されていました。現在記念碑が建立されています。
川上軌道跡碑.jpg
 *「南山」は当時小城郡南山村、昭和31年9月に佐賀郡小関村と小城郡南山村、北山村が合併して佐賀郡富士村となっています。古湯・熊の川温泉の手前にあたる富士町大字下熊川に、九州電力南山発電所があり旧村名を留めています。
*福岡栄城会では、同窓会員の方々の投稿をお待ちしております。
・特に佐高の諸先輩方からの「思い出」を募っています。
投稿よろしくお願いいたします。
投稿先 eijo.fukuoka@gmail.com


タグ:佐賀中学校
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